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新そば

少々遅れた感がありますが、新そばの季節です。 10月中旬あたりからが秋そばの収穫期で、巷では新そば祭りなるものがそこかしこで 開かれているようです。 落語でも時そばそば清、 蕎麦の殿様等々、 そばにまつわる噺は晩秋から春先にかけての、今の時期に演じられるのが本当のようです。
食事のマナーとしては珍しいあのずずずっと音を立てるそばの食べ方。 これはももともと、そばの薫りを存分に堪能できる晩秋から春先にかけてだけ許されていたものだったようです。 それが近年、そばの噺が季節に関係なく演じられるようになったのと、 噺家さんのそばを手繰る仕種がなんとも食欲をそそるというのがあいまって、 巷でも季節に関係なくあの食べ方が公認されたというの説があるようで。
(ちょっと話がずれますが、確かに私も先代の小さん師匠や柳家小三治師匠のうどん屋 を聞いた後は、決まって鍋焼きうどんを食べてました)
「信州信濃のそばよりも、あたしゃあなたのそばがよい」と都都逸で唄われるように、 そばで有名なのが信州信濃で今の長野県。 その長野県出身で生粋のそばっ喰いだったうちの爺ちゃんは、農家だったこともあり自分でも蕎麦を栽培していました。
この時期になると製粉したそば粉を、 「そばが風邪をひかんように」と米袋に入れたあと、更に大工さんの道具箱(みたいな箱)に入れて大切に保存しておいて、 仕事が終わって帰ってくると、いくら疲れていても、そのそば粉で自分で蕎麦を打って食べていたそうです。
かく云う私もそばが好きで、しかも上品な白い更科よりも真っ黒い田舎そばで しかもちょっと固めのものが好みだったりします。
以前入った立ち食い蕎麦屋でみかけた若い衆。 ざるをたぐった後、通を気取ってそば湯を頼んでました。 そこまでなら「まぁ若いのに洒落たことを」で終わったのですが、 そのそば汁たるや大量に入れたわさびねぎで色が変わってました。 それって飲んで旨いのか?わさびにしてもねぎにしても風味を味わうもの。 そば汁と混ぜた時点でそばの風味もわさびの風味もあったもんじゃない。 やっぱりわさびもねぎも箸休めにちょいとつまむ程度が良いのでは? なんぞと憤慨しまったのは、私もそばっ喰いの爺ちゃんの血を受け継いでいるからなのでしょうか。
参考資料:
  • 杉浦日向子 ソ連編著 『もっとソバ屋で憩う -きっと満足123店-』
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